絶対強度と斜め入射効果

2011.3.29; 最終更新日:2014.9.18

中性子散乱装置毎に試料の大きさや試料と検出器の距離などが違うので、散乱強度は装置によって異なります。これでは一般的な議論ができないので、絶対強度というものに換算します。最近では中性子計測に線状検出器や面検出器がよく使われます。その際に問題になるのが斜め入射による補正です。


中性子小角散乱では、散乱強度を絶対値化することによって、研究対象の詳しい情報が得られます。たとえば、高分子では分子量が決定できます。絶対散乱強度への変換は、実験の時に標準試料も同じ条件で測って、既知の値でスケールすることによって行われます。赤外分光の時の標準ポリスチレンのようなものですね。中性子散乱では、水(軽水)、バナジウムなどが使われますが、SANS-U(東大物性研@東海)では使いやすいくて経時変化の少ないポリエチレン板(ルポレンなど)を使っています。

絶対強度化の式の中にコサイン3乗の項がありますが、これは立体角の補正と、散乱角が広角になるほど散乱中性子線に対して検出器が斜めを向いている効果(oblique incidence)が無視できなくための補正項です。上の図を参考にして、すこし数学の頭の体操をしてみませんか。