両親媒性ブロック共重合体という、異なる性質の高分子鎖を2つくっつけてできる高分子の研究です。両親媒性とは水にも油にも親しみ易いという性質を意味します。この分子は水に溶けやすい成分と温度によって水に溶けたり、溶けなくなったりする性質をもつ高分子をアセトンに溶かし、水を加えることによって相分離させたとき(水誘起相分離)の構造変化を研究しました。
この分子はpPhOVE-pMOVEといい、それぞれ疎水性、親水性ブロック鎖からなっています。pPhOVEは水に溶けません。一方のpMOVEは水に溶けます。したがって、共通の溶媒であるアセトンにpPhOVE-pMOVEを溶かし、それに水を加えると相分離します。この相分離は分子の大きさ(ナノメートル)程度でおこるのでミクロ相分離といいます。
アセトン溶液はさらさらです。しかし、わずかに水を加えるとゲル化してしまいます。これは液体の中に構造が出来たことによると推察されますが、それを調べるには散乱法によるしかありませんでした。
水を加えていくと、中性子散乱強度曲線にピークが現れてきます。そのピークから溶液内で体心立方格子上にpPhOVEの玉が並んでいることが分かります。これが増粘の理由です。
いろいろ調べた結果、水誘起型ゲルと既におこなった温度誘起型(感熱応答ゲル)とでは相分離の仕方が異なることがわかりました。水誘起型ゲルでは、まず玉の並び方が決まるのに対し、温度誘起型ゲルでは玉が先にできるのです。

Fuse, C., et al., Macromolecules, 2004, 37, 7791.