中性子反射率法
最終更新日:2021.8.1
薄膜の構造解析によく使われる中性子反射率法について説明します。
ラミネートフィルムなどといった積層フィルムや物と物を接着したときの接着界面の構造や様子はどうやって知ることができるでしょうか。フィルムの上からでは一番上のフィルムしか見えなかったり、接着界面は物の間にある「埋もれた界面」なので簡単にはみることができません。そこで、中性子が登場します。中性子は物質をよく透過するので、「透視」に優れています。一方、屈折率は1よりわずかに小さいので、物質に対する中性子の膜面にすれすれに中性子を入射させると全反射してしまいますが、全反射条件よりわずかに大きな角度で中性子が薄膜に入射すると、中性子は物質中に潜り込み、反対の面で反射されて出てくる場合があります。この出てきた中性子の強度を散乱角(散乱ベクトル)の関数で調べることにより、物質内部の物質の成分や構造、特に厚み方向の構造を調べることができます。これが中性子反射率法です。
中性子反射率法で使われる用語を下の図で説明します。薄膜にすれすれに中性子を入射し、同じ角度ででてきた散乱中性子強度を入射中性子強度で割った値を反射率R(Q)といいます。
反射率R(Q)を調べることにより、薄膜内の構造がわかります。
基板のみ、単一薄膜試料、表面がでこぼこした基板の3種類の試料に対して、反射率を測定すると、R(Q)はつぎの図のような形となります。これから、薄膜の厚さ、種類(散乱長密度)、表面粗さなどがわかります
中性子反射率法の面白い点の一つは、次の図にあるように、上からではなく下にある基板側(シリコン基板など)から「試料」を透かしみることができることです。これは、中性子がシリコン基板や石英などを非常に良く通過することができるためで、X線(X線反射率法)では無理な芸当です。
中性子反射率法の「透視術」はたいしたものですね。