高角散乱透過率補正
最終更新日:2021.5.26
吸収(多重散乱)の大きい試料の小角中性子散乱実験では、透過率が散乱角の関数となり、高角になるにしたがって著しく透過率が悪くなります。それを補正する式を紹介します。
参考文献: I. Grillo, “Small-Angle Neutron Scattering and Applications in Soft Condensed Mater”, in “Soft Matter Characterization”, Chapt. 8, pp. 725, Springer, 2008
下の図に示すように、有限散乱角方向への散乱では媒体中での光路 l が長くなり、それに伴い強度減衰が起こります。
その時の、透過率は以下の式で与えられます。
これをつかって、透過率を計算すると以下の式となります。
例として、中性子の波長が6Åのときの透過率の散乱角(散乱ベクトルq)依存性を、厚み2mmのそれぞれ重水、軽水の例で示したのが次の図です。
水(軽水)が多く含まれた試料では、水素の多重散乱により、透過率は著しく低下し、その効果は高角になるほど大きくなることがよくわかりますね。
参考One Point:平均自由行程と中性子透過率