世界初のプラスチック 〜ベークライト〜

最終更新日:2011.3.29

皆さんは世界で初めて発明されたプラスチック(合成樹脂)のことをご存知でしょうか? ここでは、最初の発明から100年以上経過した現在も、主要プラスチックとして私たちの生活の中で 広く活躍している「ベークライト」について簡単に紹介したいと思います。


ベークライトは、フェノール樹脂というプラスチックで、1907年にベルギー生まれのアメリカ人 ベークランド博士(Leo Hendrik Baekeland)によって発明されました(1)。多くのプラスチックは加熱により 柔らかくなる性質(熱可塑性)がありますが、ベークライトは加熱することで硬くなる性質(熱硬化性)があり、 耐熱性、絶縁性、耐水性、機械的強度などに優れるプラスチックへと変化します。これらの特性を生かして、 電気部品、半導体、自動車、電車、建材、接着剤など様々な分野で利用されています。

2007年のプラスチック原材料国内生産実績によると、熱硬化性樹脂の上位3位は、フェノール樹脂30万トン、 エポキシ樹脂24万トン、ウレタンフォーム23万トンとなっています(2)。このデータからも、世界で最も古い歴史を 有するベークライトが私たちの生活に欠かせないプラスチックとして、現在も活躍していることがわかります。

さて、ベークライトの化学ですが、フェノール(PhOH)とホルムアルデヒド(HCHO)とを原料として合成することができ、 その化学構造はPhOHとCH2との簡単な繰り返しで構成されています。フェノールには反応点が3箇所あるため、 三次元に架橋した強固なネットワーク構造を形成することが可能です。工業的には、不溶化する前に回収した ノボラックと呼ばれる反応途中の樹脂を用い、硬化剤と混ぜて加熱成形することで、最終硬化させています。 硬化後の構造については、分析技術が飛躍的に進化した現在においても、不溶不融という特性のために完全な 解明は未だ困難であるというのも事実です。

最後に再び歴史の話に戻りますが、フェノール樹脂の最初の発見は、ドイツ人のバイヤー教授(Adolf von Baeyer)による 1872年の報告まで遡ります(3)。当時の報告によると、フェノールとホルマリンとを反応させると樹枝状となり、 更に加熱すると溶融せず、強熱すると燃焼し、木質に似た性質のものが得られた、とのことです。 最初の発見から発明に至るまで実に35年もかかっており、当時もその不溶不融な性質のために 何ができているのか良くわからない、という状況だったのではないでしょうか。



(1) 米国特許番号942,699(1907年1月出願,1909年12月登録).
(2) 日本プラスチック工業連盟2007年統計資料より。
(3) A. Baeyer, Ber.Dtsch.Chem.Ges.,5,280(1872). (※Baeyerは有機染料の研究などで1905年にノーベル化学賞を受賞)