光の三原色

2011.3.29; 最終更新日:2014.9.18

光には三原色があり、いろいろな色はこの三原色の組み合わせでできているのに、物理的には波長というものさしでしか区別できません。なぜ?


光には赤、緑、青の3原色あることはよく知られています。すべての色はこの3原色を適当な割合で混ぜ合わせることで得られます。一方、物理学を少し知っている人にとっては、光は電磁波の一種ですから物理的に「色」を特徴づけるには波長(もしくは光のエネルギー)しかありません。だから、波長だけ決めれば「色」は決まります。また、人間が色と感じる可視光のうち波長のもっとも短い「紫色」ともっとも長い「赤色」を混ぜ合わせればすべての色が再現できるのではないでしょうか。しかし、実際にはそんなことはなく、3つの原色が必要です。では、なぜ3つの「原色」が必要なのでしょうか。その答えは、私たち人間が「色」を赤、緑、青の3つの色に分解して認識しているからです。つまり、視覚を通して得られる感覚の一種で物理的性質ではない、ということです。生理学的に言うと、網膜内にある3種類の錐体細胞が吸収する可視光線の割合が色の感覚を生むということです。これらの錐体細胞は、それぞれ黄~橙、緑、青(藍)の波長に最も反応するタンパク質(オプシンタンパク質)を含んでいる。これが3原色という感覚を生むわけです。デジカメもビデオカメラも光をフィルターで3原色に分けて信号として取り込みますし、再生するときは逆に3つに分けられた色信号を組み合わせて色を再現します。魚のなかには「4原色」に分けて色再現するものもいるそうです。おもしろいですね。
もう少し難しくいうと、1802年にヤング(Thomas Young)によって提唱され、1894年にヘルムホルツ (Hermann von Helmholtz)が発展させた三原色説というもので説明されます。それは、「網膜には赤色、緑色、青色に感じる3種の受光器(錐状体)が存在し、すべての色の特性は、これら錐状体の応答量の割合で示される」というものです。Youngはイギリスの学者で、光の干渉のほか、エネルギーの概念の提唱、弾性体力学で優れた業績を残しました。さらに、ロゼッタストーンを解読した考古学者でもありました。また、HelmholtzはHelmholtz自由エネルギーで知られる有名なドイツの物理学者です。熱力学だけでなく、渦の運動や電気二重層の研究もしています。でも、軍医であり、視覚生理学・音響生理学にも優れた仕事を残した偉大な生理学者でもありました。ふたりともマルチ人間ですね。