揺らぎの分離:動的揺らぎと静的ゆらぎ

2011.3.29; 最終更新日:2014.9.18

「揺らぎ」という言葉はかげろうのような時間とともにゆらゆらして動くもののほかに、場所場所によって少しずつ違っている場合にも使います。ゲルにはこれらの2つの揺らぎが存在します。さて、どうやって分離しますか?


ゲルには2種類のゆらぎが存在します。一つは動的ゆらぎ(溶液的ゆらぎ)で有り、もう一つは静的不均一性(固体的ゆらぎ)です。アンサンブル平均光散乱法を使うとこの2つを分離して評価することができます。まず、試料位置を変えながら光散乱強度を測定します。それと同時にその各点で動的光散乱測定を行い、散乱強度の時間相関関数をとります(図左上)。このとき、光散乱強度<I>Tが強いところが相関g(2)(tau)の小さいところ、逆に<I>Tが弱いところが相関の大きいところです(図右上)。相関関数から見かけの拡散係数DAが得られます。DAを<I>Tの順に並べると綺麗な指数関数的に減衰するDAの分布が得られます(図左下)。このプロットから、散乱強度の動的ゆらぎ成分<IF>Tが求まります。この操作をより正確に行う方法として、分離プロット(図右下)を提案しました。
M. Shibayama, et al., Macromolecules, 1996, 29, 6535; M. Shibayama, et al., Physica A, 249, 245.1998.