中性子のエネルギーと温度の関係;E = kT or E = 3kT/2 ??

最終更新日:2024.4.5

中性子散乱の教科書には、中性子のエネルギーと温度の関係式として、E = kT と書かれていますよね(kはボルツマン定数)。一方で、原子炉の中の中性子は「熱平衡状態にあり、単原子気体のようにふるまう」とも書かれています。普通はこれで満足しますが、へそ曲がりな私は、次のような疑問を持ちました。
高校や大学で熱力学をならったとき、「単原子気体のエネルギーと温度の関係は、単原子分子の自由度は3(並進自由度のみ)で、それぞれkT/2のエネルギーをもつから、E = 3kT/2 となる」でした。この式と中性子の式 E = kT は違うぞ! なぜ、なぜ???
最近、ようやくその訳を理解しました。ここでは、その種明かしをしましょう。



理由がわかりましたか?? 答えは、気体分子運動論(熱力学)では、速度の2乗平均を使っているのに対し、中性子では、エネルギーの最頻値(ピーク)を使っているからなんだ。でも、なぜって??われわれの身近(巨視的空間)では、速度に分布があることは知らずに、温度から「速度」を求めているけど、その速度には「分布」があり、その代表は「平均(=2乗平均)」だからなんだ。でも、中性子(微視的空間;量子の世界)では、分布ではなく、その中性子がもつ速度が温度と関係付けられている、からなんだ。わかるかな?(実際、中性子を用いた研究では、熱平衡にある中性子を速度選別機で「切り出し」て中性子を研究に使っているんだ。)